1on1の効果はどう測るのか——調査データが示す「効果が出る順番」
1on1を1年続けた。それで効果はあったのか——この問いに答えられる会社は多くありません。実施率や開催回数は記録していても、それは「やったかどうか」であって効果ではないからです。この記事では、人事担当者を対象にした調査と、部下本人を対象にした調査の2つを並べ、1on1の効果には出やすいものと出にくいものの順番があることを確認したうえで、何をいつ測るかを整理します。
- 実施回数を追っても効果は測れない。回数はやった証拠であって成果ではない。
- 調査データを並べると、効果は接触が増える → 関係が良くなる → 本音が出るの順に、数字が段階的に下がる。
- 上司側の手応えと部下側の実感は別々に測る。片側だけ見ると必ず楽観に振れる。
1on1の効果を実施回数で測ってはいけないのはなぜか
実施回数は投入量であって、成果ではありません。週1回を12か月続けたという事実は、その時間で何かが変わったことを何ひとつ保証しません。にもかかわらず回数が指標に選ばれやすいのは、集計が簡単だからです。
回数を目標にすると、現場では逆の力が働きます。中身を問わず開催実績だけを積む運用に寄り、5分で終わる形式的な面談が「実施済み」として記録されます。測るなら、投入量ではなく、その先で何が変わったかを見る必要があります。
実際に効果として現れているのは何か
リクルートマネジメントソリューションズが2022年1月に実施した「1on1ミーティング導入の実態調査」(全国主要都市圏の企業で人事系業務を担当する正社員936名が対象)では、導入企業で実感されている変化として次の数値が報告されています。
| 実感されている変化 | 割合 | 変化の深さ |
|---|---|---|
| 上司と部下のコミュニケーションの機会が増えた | 60.1% | 接触量 |
| 部下コンディションの把握ができている | 46.5% | 把握 |
| 上司と部下の関係性が良くなった | 40.9% | 関係の質 |
| 上司と部下が本音で話せる関係になっている | 40.2% | 本音 |
注目すべきは、数字が段階的に下がっていることです。接触の機会が増えたことは6割が実感していますが、本音で話せる関係にまで至ったのは4割です。1on1を始めれば会話量はすぐ増えるが、関係の質が変わるのはその後で、本音が出るのはさらに後——データはこの順番を示しています。
この順番が分かると、測るタイミングも決まります。導入から3か月で「本音が出ているか」を測れば、当然ながら低い数字が出ます。それは失敗の証拠ではなく、まだその段階に来ていないだけです。初期は接触量、中期は関係の質、後期は本音——段階に応じて測る対象を変えるほうが実態に合います。
上司側の手応えだけを見ると、なぜ楽観に振れるのか
前節の数字には重要な限界があります。この調査の回答者は人事系業務の担当者であり、1on1を受けている部下本人ではありません。 制度を運用する側から見た手応えである点に注意が必要です。
部下本人を対象にした調査もあります。パーソル総合研究所が2024年6月11日から13日にかけて実施した「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」(直近半年間で1on1を行った正社員20〜59歳3,000名が対象)では、1on1を直近半年で経験した部下の割合は55.7%と報告されています。
2つの調査は対象者も調査時期も異なるため、数字を直接引き算することはできません。それでも実務上の教訓は明確です。制度側の手応えと受け手の実感は別物であり、片方だけを測れば必ず楽観に振れます。効果測定を設計するなら、上司側と部下側を別々に取る必要があります。
何を測ればよいのか
測る対象は、1on1そのものの評価と、1on1が変えるはずのものの2層に分けて考えます。
1層目:1on1そのものが機能しているか
- 部下側の満足度:上司側ではなく部下に聞く。匿名で取らないと本音は出ない。
- 議題を誰が出したか:部下が出した回の割合。上司が出し続けているなら進捗確認に戻っている。
- キャンセル率:忙しさを理由に飛ばされた回数。優先順位の実態がここに出る。
2層目:1on1が変えるはずのものが動いたか
- 本人の行動の変化:面談で合意した改善が、実際の仕事に現れたか。
- 離職の兆し:辞める人が減ったかではなく、辞める前に気づけた件数。
- 成果指標:接客であればスコア、営業であれば数字。ただし1on1以外の要因も混ざる点に注意。
効果測定で気をつける3つのこと
- 因果を主張しすぎない:1on1を始めた年に離職率が下がっても、原因が1on1だとは限りません。人手不足の状況や制度変更など、他の要因が同時に動いています。
- 比べる相手を用意する:全社一斉に導入すると、比較対象が失われます。段階的に導入すれば、導入済みの拠点と未導入の拠点を比べられます。
- 短期で判定しない:前述のとおり、本音が出るのは最後です。3か月で効果なしと判断すると、効果が出る前に打ち切ることになります。
多拠点では「行動が変わったか」を直接見られない
効果測定でいちばん難しいのは2層目の「本人の行動の変化」です。同じフロアにいれば、面談で合意したことが実際に行われているかは見ていれば分かります。しかし拠点が分かれていれば、上司はそれを見られません。結果として、変化の確認が次回の1on1での自己申告になります。
自己申告には限界があります。本人が「できている」と感じていても、実際にできているとは限らないからです。この差は本人を責めても埋まりません。
1on1コンシェルジュは、接客音声をAIが客観採点し、本人の自己評価との差分を可視化します。1on1で合意した改善点が次の接客に現れたかどうかを、申告ではなくスコアの推移で追えます。効果測定の2層目を、離れた場所からでも確認できる形にするのが狙いです。
よくある質問(FAQ)
1on1の効果はどうやって測ればよいですか?
実施回数ではなく、1on1そのものが機能しているか(部下側の満足度、議題を誰が出したか、キャンセル率)と、1on1が変えるはずのものが動いたか(本人の行動の変化、離職の兆しに気づけた件数、成果指標)の2層に分けて測ります。回数は投入量であって成果ではないため、指標に選ぶと形式的な開催実績を積む運用に寄ります。
1on1の効果はどれくらいで出ますか?
リクルートマネジメントソリューションズの2022年の調査では、コミュニケーションの機会が増えたと実感されている割合が60.1%、関係性が良くなったが40.9%、本音で話せる関係になっているが40.2%と、段階的に数字が下がっています。会話量はすぐ増えますが、関係の質が変わるのはその後、本音が出るのはさらに後です。導入3か月で本音の有無を測ると低い数字が出ますが、それはまだその段階に来ていないだけです。
上司側と部下側のどちらに効果を聞くべきですか?
両方を別々に測ります。制度を運用する側の手応えと、1on1を受けている部下本人の実感は別物であり、片方だけを測ると必ず楽観に振れます。部下側は匿名で取らないと本音の回答は得られません。
1on1を始めて離職率が下がったら、効果があったと言えますか?
断定はできません。1on1を始めた年に離職率が下がっても、人手不足の状況や他の制度変更など複数の要因が同時に動いているためです。効果を主張するなら、全社一斉ではなく段階的に導入し、導入済みの拠点と未導入の拠点を比べる設計にしておく必要があります。
- リクルートマネジメントソリューションズ「1on1ミーティング導入の実態調査」(2022年1月実施、全国主要都市圏の企業にて人事系業務を担当する正社員936名) recruit-ms.co.jp
- パーソル総合研究所「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」(調査時期 2024年6月11日〜13日、直近半年間で1on1を行った正社員20〜59歳 3,000名) rc.persol-group.co.jp