1on1面談シートのテンプレート——項目の決め方と記入例
1on1のシートを探すと「ダウンロードはこちら」ばかりが出てきて、肝心の「なぜその欄が要るのか」が書かれていない——そう感じたことがあるかもしれません。この記事では、テンプレートの現物をこのページの中にそのまま掲載します。ダウンロードも登録も不要で、表をコピーして表計算ソフトに貼ればそのまま使えます。そのうえで、全15項目のひとつひとつについて「なぜその欄を置くのか」を調査データに紐づけて説明し、多拠点に散らばる店頭スタッフとの面談を想定した記入例まで通しで示します。
- 1on1面談シートとは、面談で何を扱い、何を記録し、次に何を持ち越すかをあらかじめ決めておく記入用紙のことである。
- 項目は「書きやすさ」ではなく「マネージャーが何を学ぶか」で決める。パーソル総合研究所の2024年の調査では、上司側の困りごとの1位が「面談について学ぶ仕組みがない」(35.4%)だった。
- シートのいちばん上の欄は「前回決めたことの進み具合」にする。同調査で部下側の困りごとの1位は「面談効果が感じられない」(29.7%)であり、決めたことが回収されないことが効果実感を削る。
1on1面談シートとは何か——なぜテンプレートが必要なのか
1on1面談シートとは、面談で何を扱い、何を記録し、次に何を持ち越すかをあらかじめ決めておく記入用紙のことです。1on1そのものに公的な定義はなく、進め方は各社の裁量に委ねられています。だからこそ、様式が「何を聞くべきか」を決める役割を持ちます。
テンプレートが必要な理由は、記入を楽にするためではありません。研修の代わりになるからです。パーソル総合研究所「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」(2024年6月11日〜13日実施、従業員50名以上の企業に勤め、直近半年間で1on1を行った20〜59歳の正社員3,000名が対象)によれば、上司側が挙げた1on1の困りごとの1位は「面談について学ぶ仕組みがない」で35.4%でした。2位は「多忙でスケジュール設定が困難」35.3%、3位は「面談の効果が感じられない」27.6%と続きます。
つまり、多くのマネージャーはやり方を教わらないまま1on1を任されているということです。研修を組める会社ばかりではありません。そこで、シートの項目そのものが「何を聞くべきか」を教える装置になります。欄の見出しが「今日話したいこと」ではなく「今日話したいことを、その理由と一緒に」であれば、マネージャーは理由を聞く面談になります。項目の設計は、そのまま面談の設計です。
もうひとつ、同じ調査で部下側の困りごとの1位は「面談の効果が感じられない」で29.7%(2位「学ぶ仕組みがない」28.3%、3位「スケジュール設定が困難」26.3%)でした。書いて終わるシートは、この不満をむしろ強めます。記録が次の面談で使われないなら、記入は作業でしかないからです。前回の約束を回収する欄が要る理由は、ここにあります。
そのまま使える1on1面談シートのテンプレート
以下が本記事のテンプレートです。面談前・面談中・面談後の3ブロック、全15項目で構成しています。表をそのまま選択してコピーし、表計算ソフトに貼り付ければ使えます。項目を減らす場合は、「1. 前回決めたことの進み具合」と「13. 次回の冒頭で必ず確認すること」の2つだけは残してください。この2つが対になって、面談を単発の雑談から連続した支援に変える部分です。
シートの先頭には、基本情報として次の4つを置きます:実施日/対象スタッフ名・所属拠点/担当マネージャー名/前回の実施日。前回実施日を毎回書かせるのは、間隔が空いたこと自体をマネージャーに気づかせるためです。
| ブロック | No. | 記入欄 | 記入者 | 書き方の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 面談前 (前日までに) |
1 | 前回決めたことの進み具合 | 本人 | できた/途中/できなかった/やめた、から選び、一言添える |
| 2 | 今日話したいこと(最大2つ) | 本人 | 思いつかなければ「特になし」でよい。空欄のままにしない | |
| 3 | それを話したい理由 | 本人 | 「困っている」「決めてほしい」「聞いてほしいだけ」のどれかを明示 | |
| 4 | いまの状態(10段階)と、前回との差 | 本人 | 数字ひとつ。理由は書かなくてよい | |
| 5 | マネージャーに決めてほしいこと | 本人 | 判断を仰ぎたい事項。なければ空欄で可 | |
| 面談中 (その場で) |
6 | 本人が話した事実 | マネージャー | 解釈を混ぜず、本人が使った言葉のまま短く書く |
| 7 | 本人の受け止め・感じ方 | マネージャー | 事実と分けて書く。「〜と感じているとのこと」 | |
| 8 | こちらから渡した新しい見方 | マネージャー | 助言・別の解釈・他拠点の事例など。渡していなければ空欄 | |
| 9 | 確認した状況(業務量・シフト・体調) | マネージャー | チェック形式で可。異常があれば内容を記す | |
| 10 | 話しづらそうだったこと | マネージャー | 言い淀み・話題の切り替えなど。無理に掘らず、書き留めるだけ | |
| 面談後 (終了時) |
11 | 次回までに本人がやること(1つ) | 両者で確認 | 期限を入れる。2つ以上書かない |
| 12 | 次回までにマネージャーがやること(1つ) | 両者で確認 | 期限を入れる。「検討する」で終わらせない | |
| 13 | 次回の冒頭で必ず確認すること(1つ) | 両者で確認 | 次回シートの1番に転記する項目 | |
| 14 | 共有してよい範囲 | 両者で確認 | 本人限り/マネージャー間まで/人事まで、から選ぶ | |
| 15 | 次回の実施予定日 | 両者で確認 | その場でカレンダーに入れる |
エクセル・スプレッドシートで使う場合の作り方
表計算ソフトで運用する場合は、1回の面談を1行にせず、1シート(1タブ)にしてください。1行にまとめると自由記述が列に押し込まれて読めなくなり、面談中に前回の記録を開く運用が続きません。タブ名は「日付+スタッフ名」に統一し、シートの先頭(No.1の欄の近く)に前回タブへのリンクを置いておくと、前回の約束を回収する動線が自然にできます。拠点ごとにファイルを分けるなら、様式だけは全拠点で同一のものを配ります。様式が違うと、拠点間の比較が成り立たなくなります。
各項目はなぜ必要なのか——1on1シートの項目の決め方
項目を決める基準は「書きやすいか」ではなく「その欄があることで、マネージャーが何を聞けるようになるか」です。パーソル総合研究所の同調査は、1on1で部下が「本音を話す」こと、日頃から部下への「配慮」があること、そして「新たな視点」からの助言があることが、部下の成長にプラスの影響を与えていたと整理しています。以下、各欄をこの3つと「効果実感」に紐づけて説明します。
面談前の5欄——議題の主導権を本人に渡す
- 1. 前回決めたことの進み具合:シートの最上段に置く欄です。ここがあると、面談は必ず「前回の続き」から始まります。部下側の困りごと1位が「面談の効果が感じられない」(29.7%)である以上、決めたことが宙に浮く構造は先に潰しておく必要があります。「できなかった」「やめた」も選択肢に入れておくのが要点で、達成報告しか書けない欄にすると本音が消えます。
- 2. 今日話したいこと(最大2つ):議題を本人が決めるための欄です。上限を2つにしているのは、3つ以上あると全部が浅くなるためです。「特になし」と書けることも明示します。無理に議題を作らせると、当たり障りのない話題で30分が埋まります。
- 3. それを話したい理由:この欄がこのテンプレートで最も効く箇所です。「困っている」のか「決めてほしい」のか「ただ聞いてほしい」のかが先に分かると、マネージャーは聞き方を間違えなくなります。聞いてほしいだけの話に解決策を出すのは、本音が引っ込む典型的な流れです。学ぶ仕組みがないマネージャーに対して、この欄が「まず種類を確かめる」という一手を教えます。
- 4. いまの状態(10段階)と前回との差:「配慮」の観測点です。数字ひとつなので書く負担がほとんどなく、それでいて差分が見えます。7が6に下がった月は、言葉より先に変化が出ています。理由を書かせないのは、書けないときに空欄になってしまうのを避けるためです。
- 5. マネージャーに決めてほしいこと:本人の権限では動かせない事柄を明示的に出す欄です。ここが埋まっている面談は、その場で意思決定が起きるので効果実感につながりやすくなります。
面談中の5欄——事実と解釈を分けて残す
- 6. 本人が話した事実と7. 本人の受け止め:この2つを分けるのは、後から読み返したときにマネージャーの解釈が事実に混ざるのを防ぐためです。「モチベーションが下がっている」は解釈で、「今週2回、開店前に着いても声かけができなかった」が事実です。事実で書かれた記録だけが、3か月後に読み返して意味を持ちます。
- 8. こちらから渡した新しい見方:「新たな視点」に対応する欄です。空欄が続いたら、その1on1は傾聴だけで終わっているというサインになります。空欄が許される欄を置いて、空欄の多さを自己点検に使う——これがマネージャーにとっての教材としての機能です。
- 9. 確認した状況(業務量・シフト・体調):「配慮」に対応する欄です。話が盛り上がるとこの確認は飛びます。チェック形式で残しておくと、面談の終盤に必ず戻ってこられます。
- 10. 話しづらそうだったこと:その場で解決しない情報を捨てないための欄です。言い淀んだ、話題を変えた、視線が落ちた——書き留めるだけで掘らないのが原則です。次回以降、同じ話題で同じことが起きたら、そこに何かがあります。
面談後の5欄——次回の冒頭を先に決める
- 11・12. 次回までに本人/マネージャーがやること:それぞれ1つだけに絞ります。マネージャー側の欄を必ず設けるのは、宿題が本人にだけ出る面談は指示出しの場になるためです。両方に期限を入れます。
- 13. 次回の冒頭で必ず確認すること:次回シートの1番に転記する項目です。この欄と1番の欄が対になって、面談が連続します。1回の面談で回収する約束を1つに絞るのは、3つ書くと次回に全部が流れるからです。
- 14. 共有してよい範囲:本人と合意して決めます。合意のない共有が一度でも起きると、以後シートには当たり障りのないことしか書かれなくなります。本音が成長に効くという調査結果を前提にすれば、この欄は記録の精度そのものを守る欄です。
- 15. 次回の実施予定日:その場で日程を押さえます。上司側の困りごと2位が「多忙でスケジュール設定が困難」(35.3%)である以上、後で調整する運用は高い確率で流れます。
1on1面談シートの記入例——店頭スタッフとの面談ではどう書くか
記入例として、5拠点を担当するエリアマネージャーと、家電量販店内の携帯電話コーナーに常駐する販売スタッフSさん(入社7か月)の隔週1on1を想定します。マネージャーは月に1回しかその店舗に立ち寄れず、普段はオンラインで面談している、という前提です。
| 記入欄 | 記入例 |
|---|---|
| 1. 前回決めたことの進み具合 | 途中。「料金プランの説明を最後に一度まとめ直す」は、混雑していない時間帯はできたが、土日はできていない |
| 2. 今日話したいこと | ①土日の接客が雑になっている自覚がある ②他店から応援に来る方への引き継ぎのやり方 |
| 3. それを話したい理由 | ①は困っている(自分では直し方が分からない) ②は決めてほしい(店舗ごとにやり方が違う) |
| 4. いまの状態(10段階) | 6(前回7) |
| 5. 決めてほしいこと | 応援スタッフへの引き継ぎメモを、店舗共通の様式にしてよいか |
| 6. 本人が話した事実 | 「土日は1人あたり15分くらいで回している。プランの比較は口頭だけで、紙は出していない」 |
| 7. 本人の受け止め | 雑になっている自覚はあるが、待っているお客様が見えると焦ってしまう、とのこと |
| 8. こちらから渡した新しい見方 | 時間を延ばすのではなく、最後の30秒だけ「今日決めたこと」を復唱する形を提案。B店で先に試している例を共有 |
| 9. 確認した状況 | シフト:土日連続4週。休憩:取れている。体調:問題なし。→ 土日の連続は次月シフトで調整を検討 |
| 10. 話しづらそうだったこと | 応援スタッフの話題のとき、「まあ、人によるので」と2回言って話を変えた |
| 11. 次回までに本人がやること | 土日の接客で「最後の30秒の復唱」を試す(次回まで) |
| 12. 次回までにマネージャーがやること | 引き継ぎメモの共通様式の可否を8/8までに回答する |
| 13. 次回の冒頭で必ず確認すること | 「最後の30秒の復唱」を土日にやってみてどうだったか |
| 14. 共有してよい範囲 | マネージャー間まで(シフトの相談があるため) |
| 15. 次回の実施予定日 | 8/14(木)17:00 オンライン |
この記入例で注目していただきたいのは、6番と7番が分かれていることです。「焦ってしまう」は本人の受け止めで、「1人15分」「紙は出していない」が事実です。事実の側だけを取り出せば、3か月後に「15分がどう変わったか」を追えます。もうひとつは10番です。「人によるので」と2回言って話を変えた、という記録はその日には使いませんが、次回も同じ反応が出たら、そこに扱うべき論点があります。
1on1シートを使っても効果が出ないときは何を見直すか
シートを導入しても効果が出ないときは、まず前回の約束が回収されているかを確認してください。パーソル総合研究所の2024年の調査で、部下側の困りごとの1位は「面談の効果が感じられない」(29.7%)でした。決めたことが次回に持ち越されないと、面談は毎回ゼロから始まる雑談になり、書く意味が失われます。見直す点は主に次の3つです。
1. 前回の約束を回収する欄が機能していない
テンプレートの13番(次回の冒頭で必ず確認すること)が1番(前回決めたことの進み具合)に転記されていない、というのが最も多い形です。運用を直すなら、面談の開始1分を「1番を読み上げるだけ」に固定します。マネージャーが冒頭で近況を尋ねる形に戻ると、前回の記録は開かれません。
2. マネージャーが記録係になっている
面談中に書く欄が多すぎると、マネージャーは画面を見て手を動かし続けることになり、相手の表情や声の変化を拾えなくなります。その場で書くのは6・7・8番の3つまでにして、9番以降は面談直後の5分で埋める運用にすると現実的です。
3. シートが評価に流用されている
本人の同意なくシートが人事評価の材料に回ると、次回から書かれる内容は当たり障りのないものに変わります。同調査は、1on1で部下が本音を話すことが成長に正の影響を与えると整理しています。14番(共有してよい範囲)を毎回その場で確認する運用は、手間のように見えて、記録の中身を守る手続きです。1on1と評価面談の役割の違いは、1on1と面談・評価面談・コーチング・メンター制度の違いで整理しています。
遠隔・多拠点で1on1シートを回すときの注意点
拠点が離れている場合、シートの役割は「記録」から「見えていないものを埋める道具」に変わります。同じ場所で働いていれば普段の様子から分かることが、月1回しか訪店できない関係では一切入ってきません。注意点は3つあります。
様式は全拠点で同一にする
拠点ごとにシートを作り替えると、拠点間の比較が成り立ちません。項目を減らすのは構いませんが、減らし方まで揃えます。様式が同じであれば、「10番(話しづらそうだったこと)がA店だけ毎回空欄」といった、拠点差の兆候が読めるようになります。拠点による差の見方は拠点によって離職率が違う理由でも扱っています。
事実の欄を厚く書く
遠隔では、マネージャーの手元に残るのはシートの文字だけです。「前向きだった」「元気そうだった」という印象語で埋めると、3か月後に読み返しても何も分かりません。6番の事実欄に、本人が使った言葉をそのまま短く残すことが、遠隔ほど効きます。
主観の記録に、客観の材料を1つ足す
シートに書けるのは、面談の場で交わされたことだけです。現場で実際にどう接客しているかは、本人の申告とマネージャーの印象を通した情報になります。ここに客観的な材料が1つあると、面談の入口が変わります。1on1コンシェルジュは、店頭スタッフの実際の接客音声をAIが同一の基準で採点し、自己評価とのギャップを可視化するサービスです。「土日は雑になっている気がする」という本人の申告に対して、平日と土日のスコア差という材料を持って臨めると、面談は原因の話に進みやすくなります。
よくある質問(FAQ)
1on1面談シートは誰が記入するのですか?
ブロックごとに記入者を分けます。面談前の欄は部下本人が書き、面談中の欄はマネージャーがその場で書き、面談後の「次回までにやること」は両者で確認しながら埋めます。すべてをマネージャーが書くとシートが業務報告書に近づき、部下の側は「聞かれたことに答えるだけ」の場になりやすくなります。面談前の欄を本人に渡すことが、議題の主導権を本人に持たせる仕掛けになります。
1on1シートの項目は何個くらいが適切ですか?
面談中にマネージャーが書く欄は3つまでに抑えるのが現実的です。30分の面談で手を動かしながら記録できる量には限界があり、欄を増やすほどマネージャーは記録係になり、相手の表情や声の変化を見る余裕がなくなります。面談前と面談後は本人の記入や事後の整理に時間を使えるため、多少項目が多くても運用できます。本記事のテンプレートは面談前5欄・面談中5欄・面談後5欄の計15欄ですが、面談中の5欄のうち実際にその場で書くのは上位3欄で十分です。
1on1面談シートはエクセルで作っても問題ありませんか?
問題ありません。むしろ表計算ソフトのほうが、拠点をまたいで同じ様式を配りやすく、後から検索もしやすくなります。作り方のコツは、1回の面談を1行にせず1シート(1タブ)にすることです。1行にまとめると自由記述が読めなくなり、前回の記録を面談中に開く運用が続きません。タブ名を「日付+スタッフ名」にし、先頭に前回タブへのリンクを置いておくと、前回の約束を回収する動線ができます。
記入した1on1シートは本人以外に共有してよいのですか?
共有範囲を本人と合意してから共有します。テンプレートに「共有してよい範囲」の欄を設けているのはこのためで、面談の最後に本人と一緒に決めます。合意なく人事評価や他部署に回ると、次回から本音が出なくなります。パーソル総合研究所の2024年の調査では、部下が本音を話すことが成長に正の影響を与えると整理されており、共有範囲の扱いは記録の精度そのものに関わります。
出典
- パーソル総合研究所「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」(2024年6月11日〜13日実施/従業員50名以上の企業に勤め、直近半年間で部下の成長支援を目的とした面談を行った20〜59歳の正社員3,000名)
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/1on1/