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メンター面談の質問——何を聞くかは、公的マニュアルに書いてある

「メンター面談で何を聞けばいいのか」を探すと、出どころの分からない質問リストばかりが出てきます。ところが公的なマニュアルには、聞くことも、進め方も、点検の項目まで書かれています。しかも読むと分かるのは、質問はメンターが用意するものではないという設計思想です。この記事では厚生労働省委託事業のマニュアル原本を開き、面談ワークシートの6欄、段階別に話し合う内容、メンター用・メンティ用のチェックリストを、そのまま掲載します。

質問リストを探す前に——「聞く側が用意する」設計になっていない

先に結論を書きます。メンター面談は、メンターが質問を用意して投げかける形では設計されていません。

根拠は、マニュアルに載っている「面談ワークシート(例)」(図表10)です。この様式には「今回相談したいこと」という欄があり、そこに(メンティが事前に記入)と明記されています。前回からの進捗も同じくメンティが事前に記入します。

つまり、何を話すかは相談する側が先に出す。メンターは、出てきたものを聴いて支援する側です。マニュアルはメンターについて次のように定義しています。

メンター制度においては、基本的にメンターは、仕事の指示・命令を下し、評価を行う利害関係のある直属の上司や先輩ではなく、異なる職場の先輩社員(役員・管理職層レベルから数年先輩まで目的によって設定) 同マニュアル。メンター制度を「斜めからの支援」とも表現している

議題を持ち込むのが上司の面談だとすれば、議題を受け取るのがメンター面談です。質問リストを先に握るほど、この設計から外れていきます。

面談ワークシートの6欄——これが実質の「聞くこと」

では何を書き、何を確認するのか。図表10「面談ワークシート(例)」の記入項目と、マニュアルに載っている例示をそのまま引きます。

記入欄マニュアルの例示(原文)
目的・目標
(面談の目的と目標を確認)
将来的なキャリアパス(どのような仕事をしたいか)を描き、そのためにどのような能力開発が必要かを明確にする
前回からの進捗と実践
(メンティが事前に記入)
紹介を受けた社外の異業種交流会に参加したことにより、人脈が広がった
今回相談したいこと
(メンティが事前に記入)
今後管理職になった際にワーク・ライフ・バランスを実践しながら、管理職として成果を出すために必要なこと
今回の面談での気づき
(メンター・メンティ双方が記入)
面談後に記入する欄(例示なし)
次回までの課題目標・行動計画同上
次回の実施予定日同上

出典:同マニュアル 図表10「面談ワークシート(例)」。このほかシート冒頭に、回数・日付・場所・時間と、メンティ/メンターの所属・氏名の欄があります。

マニュアルはこのシートについて、「面談の回数を重ねるにつれて、話題が多岐に及んで、目的が曖昧になることがあります」とし、当初の目的やルールを再確認するためのツールだと説明しています。質問集ではなく、話が散らからないための枠だということです。

書くときの注意(原文)
「記載する際、個人情報の取り扱いには注意しましょう。個人的な事項の記載が目的ではないことに留意が必要です」
このシートは推進部門に提出して進捗を共有する運用が想定されています。本人の私的な事情そのものを書き残す様式ではありません。

それでも話題が出てこないときは、出す側を変えてよい

「相談したいことが特にありません」は必ず起きます。マニュアルはテーマの決め方として、4つのパターンを挙げています。

そのうえで、「メンティの主体性が弱かったり、問題意識が明確でないなどの要因により、メンティがメンタリングに十分な満足を得られない場合があります」とし、こうした場合はメンターや推進部門がテーマを提示することも有効だとしています。

話すことが出てこないのは制度の失敗ではなく、あらかじめ想定されている状態です。そこで初めて、メンター側がテーマを出す番になります。順番が逆ではありません。

段階によって、話し合う内容は変わる

マニュアルはメンタリングを初期・深化・解消の3段階に分け、それぞれで確認すべきことを示しています。原文の記述を整理すると、こうなります。

段階この段階の定義(原文)話し合う内容留意点
初期段階 メンターとメンティがマッチングされ、目的や目標を確認し、互いを理解し合う段階 どのようなことを話したいのか、どうなりたいのか、お互いの期待感/互いの仕事や職場のこと、仕事上の懸念など不安材料/しっくりこない場合は遠慮なく伝えると決めておく/頻度や方法の確認 期待感が自分勝手なものになると関係づくりに齟齬が生じる。メンターは職制上の関係ではないことを自覚する
深化段階 メンター関係が進展し、さまざまな支援的行為が行われる段階 当初設定した目標がどの程度達成されているか/懸念事項や新たな要望はないか/関わり方の軌道修正 違和感や疑問が出るときこそ、初期段階で話し合った内容を思い出し、機会を意図的に作る
解消段階 メンタリングが終了に近づき、活動のレビューや今後の方向性を確認する段階 目標がどの程度達成されたか/支援的な関わりができたか/何か心配事があればいつでも相談に対応すると伝える 終了後もメンターが上司のように振舞ったり、メンティが直属上司との関わりを疎かにするケースに注意

注目したいのは、3段階すべてに「直属の上司との関係」への言及があることです。初期段階では「自身の業務に支障が出ないようにすること、直属上司とのコミュニケーションも疎かにしないことが大切」とされ、解消段階では上司の代わりになってしまう関係を戒めています。メンター制度は上司の代替ではない、という線がここでも引かれています。

「聞いてはいけないこと」を先に決めている会社がある

マニュアルの事例集には、質問の中身より先にしてはいけない質問を決めている例が載っています。

事前説明会を行い、メンタリングについての説明(コーチングやティーチングとの違いなど)、メンターとしての心構えや得られる知見、メンタリングのルール(メンタリング中の態度やメンティに質問してはいけないことなど、注意点)、メンタリング当日の流れ(初回は、自己紹介をすること、2回目以降は最初に話したい事のテーマの確認をすること、ポジティブなフィードバックとして気づきの共有をすること)を伝えています。 同マニュアル・事例(富士通株式会社/事例集p74)

あわせて、初回は自己紹介、2回目以降は最初に話したいテーマの確認から入るという進行も示されています。質問リストではなく、入り方の型を決めているわけです。

もう1社の例では、注意事項の筆頭に置かれているのが技術ではなく姿勢です。

注意事項として、まずは「“聴く”こと、よき“理解者となること”」や、守秘義務、実施を就業時間内とすること、実施方法等について記載しています。 同マニュアル・事例(味の素株式会社/事例集p56)

実施を就業時間内とするという一文は見落とされがちですが重要です。業務時間外に設定した時点で、メンティ側の負担になり、続かなくなります。

面談の質を点検する——マニュアルのチェックリスト

マニュアルには、面談そのものを自己点検するチェックリストが2種類あります。使い方も指定されていて、「メンタリングの初期段階が終わった時点で」自己チェックし、「解消段階においては、全ての項目が満たされていることを目標に」する、とされています。両方とも全項目を掲載します。

メンター用チェックリスト(図表11・全11項目)

No.項目(原文)
1メンター制度の趣旨、目的を正しく理解したうえで、メンタリングの目標をメンティと共有している
2熱意や使命感をもってメンタリングに臨んでいることをメンティに示している
3メンタリングに必要な知識やスキル(コーチング、カウンセリングなど)を実践している(もしくは修得に努めている)
4メンターが行いたい指導をするのではなく、メンティの要望を踏まえた支援になるよう努めている
5自分の仕事が忙しいことを理由に、メンターとしての役割を疎かにしていない
6メンティの話を積極的に聴き、支援のニーズを理解することに努めている
7積極的な言葉がけでメンティを励ましたり、率直なフィードバックによって、メンティの気づきを喚起している
8メンティの不得意な面よりも良い面に注目するようにしている
9言いにくいことでも率直に話せるように、気兼ねない雰囲気をつくっている(どんなことでも守秘義務を守る姿勢を感じさせ安心させる)
10メンタリングが原因で業務や上司関係に支障が出ないように配慮している
11メンティの育成段階に応じたアドバイスになっている

4番が効きます。「メンターが行いたい指導をするのではなく」——質問リストを握って面談に入ると、たいていここに抵触します。

メンティ用チェックリスト(図表12・全10項目)

No.項目(原文)
1メンター制度の趣旨、目的を正しく理解したうえで、メンタリングの目標をメンターと共有している
2何かをしてくれる存在としてメンターに接するのではなく、自分から学ぼうという姿勢を示している
3自分が成長するための具体的な行動について、積極的に言葉や態度で示している
4メンターからフィードバックされた意見やアドバイスを受け入れる素直な姿勢を示している
5仕事が忙しいことを理由に、メンタリングで約束したことを疎かにしていない
6自分の言いたいことやメンターにお願いしたいことを率直に伝えている
7メンターの指示やフィードバックに対する疑問や不満はその場で伝えている
8成長への意欲をメンターにきちんと伝え、望んでいる支援をうまく引き出している
9メンターからの指導を受けたり、コミュニケーションをとる機会を積極的につくっている
10担当業務、上司との関係、働き方に良い影響が生まれるよう、メンターからの助言を得ている

メンティ側にも10項目あるのが、この制度の特徴です。支援を受ける側にも果たすべき役割があるという前提で作られています。導入時に本人へ渡していない会社が多い部分です。

対面が原則。オンラインのときに気をつけること

多拠点や遠隔で運用する場合に関わる記述もあります。マニュアルは対話の方法として、①社内で対面 ②社外で対面 ③Web会議(オンライン)で対面 ④メール、SNS ⑤電話 を挙げたうえで、こう書いています。

対話はWeb会議(オンライン)を含め、対面が原則です。特にメンタリング開始時は、信頼関係の構築が重要になりますので、できる限り対面の機会を設けるようにすることが大切です。(中略)また、Web会議の場合、周囲に聞かれたくない話をする場合があるため、お互いに参加する場所に配慮したり、話が長くならないように時間を決めておいたりする工夫を行うとよいでしょう。 同マニュアル

「参加する場所に配慮」は、店舗や現場に常駐するスタッフを抱える会社ほど現実的な論点です。バックヤードや車内から接続させている限り、話せる範囲は狭まります。

上司の1on1と、どう使い分けるか

ここまで見ると、メンター面談で聞くことは上司が行う1on1とかなり近いことが分かります。前回の進捗を確認し、本人が話したいことを先に出し、気づきを残し、次回までの行動と日程を決める——構造はほぼ同じです。

違うのは担当者と、扱える話題の範囲です。評価者ではないメンターだからこそ、キャリアや働き方といった、上司には言いにくい話が乗ります。逆に、業務の指示や評価に関わる話はメンター面談では扱えません。制度としての切り分けは1on1と面談・評価面談・コーチング・メンター制度の違いで、法令と公的資料の定義から整理しています。

上司の1on1側の様式が必要な場合は、1on1面談シートのテンプレートに全15項目を記事内に掲載しています(記入できるExcelと印刷用PDFの原本も無料でお渡ししています)。メンター面談用に転用するなら、評価や業務指示に関わる欄を外し、上の6欄に寄せてください。

相手や目的に応じて聞き方を組み立てたい場合は、1on1質問ジェネレーターが使えます(登録不要・その場で表示)。ただし本記事のとおり、メンター面談では出来上がった質問を読み上げないでください。相手が出したテーマに沿って、どう掘るかの引き出しとして持つ使い方が合います。

なお、話題が出てこない状態そのものへの打ち手は1on1で話すことがない——ネタ切れの正体と、議題の作り方で、沈黙が起きる場面ごとの対処は1on1で部下が話さないで扱っています。

よくある質問(FAQ)

メンター面談では、メンターが質問を用意しておくべきですか?

基本的には用意しません。厚生労働省委託事業のメンター制度マニュアルにある「面談ワークシート(例)」では、「前回からの進捗と実践」と「今回相談したいこと」の2欄をメンティが事前に記入すると定められています。話したいことを出すのは相談する側で、メンターは聴いて支援する側です。同マニュアルのメンター用チェックリストにも「メンターが行いたい指導をするのではなく、メンティの要望を踏まえた支援になるよう努めている」という項目があります。

メンティから「相談したいことがない」と言われたら、どうすればよいですか?

マニュアルはテーマの決め方として、ペアに任せる/メンティから提示する/メンターから提示する/推進部門からテーマ案を提示する、の4パターンを挙げています。そのうえで、メンティの主体性が弱かったり問題意識が明確でないなどの要因により十分な満足を得られない場合があるとし、こうした場合はメンターや推進部門がテーマを提示することも有効だとしています。話すことが出てこないのは想定されている状態で、そこで初めてメンター側が出す番になります。

メンター面談の記録は、どこまで書いてよいのですか?

面談ワークシートは推進部門に提出して進捗を共有する運用が想定されているため、私的な事情そのものを書き残す様式ではありません。マニュアルも「記載する際、個人情報の取り扱いには注意しましょう。個人的な事項の記載が目的ではないことに留意が必要です」と明記しています。書くのは目的・目標、前回からの進捗、今回相談したいこと、面談での気づき、次回までの課題目標と行動計画、次回の実施予定日です。

メンター面談はオンラインでもよいのですか?

マニュアルは、社内で対面・社外で対面・Web会議・メールやSNS・電話の5つを挙げたうえで、Web会議を含めて対面が原則だとしています。特に開始時は信頼関係の構築が重要なため、できる限り対面の機会を設けることが大切だとされています。Web会議で行う場合は、周囲に聞かれたくない話をすることがあるため、お互いに参加する場所に配慮し、話が長くならないよう時間を決めておく工夫が示されています。

出典

※ このマニュアルは女性社員の活躍推進を目的とした委託事業の成果物ですが、面談ワークシート・チェックリスト・3段階の進め方は対象を限定しない一般的な記述です。本記事では、その部分を引用しています。段階別の表は、原文の記述を当社が表形式に整理したものです(各欄の文言は原文どおり)。

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上司の1on1側の様式として「1on1面談シート(全15項目・記入例つき)」を、記入できるExcelと印刷用PDFで無料でお渡しします。メンター面談用に転用する場合は、評価や業務指示に関わる欄を外してお使いください。
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この記事の発行者

Life concierge(石川県金沢市)

多拠点・遠隔で働くスタッフの接客品質マネジメントを支援し、接客音声をAIが客観採点するサービス「1on1コンシェルジュ」を開発・運営しています。

作成方針:数値・制度・法令は公的統計や法令・告示の一次資料に当たり、原文で照合したうえで記載しています。この記事の引用は、厚生労働省が公開するマニュアルPDFの原本を開き、図表および本文の記載と照合しています。下書きの作成にAIを利用し、公開前に運営者が内容を確認しています。

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