1on1で話すことがない——ネタ切れの正体と、議題の作り方
1on1を始めて数か月。最初のうちは話すことがあったのに、だんだん話題が尽きてきた。「最近どう?」と聞いて「特にないです」と返ってくる。5分で終わる回が増えてきた——。よく起きる行き詰まりです。多くの人はここで質問リストを探しに行きますが、リストを増やしても解決しません。ネタ切れは対話の技術の問題ではないからです。この記事では原因を2つに分けて特定し、議題の作り方を具体的に示します。
- ネタ切れの原因は材料がないか言えないかの2つ。まずどちらかを見分ける。
- 「特にないです」は話題がない合図ではなく、話しても仕方がないという判断であることが多い。
- 質問リストは材料がある人には効くが、材料がない状態で使うと尋問になる。
1on1で話すことがなくなるのはなぜか
原因は2つに分かれます。話す材料が手元にないか、あっても言えないかです。この2つは症状が同じ(部下が黙る)なのに、対処法が正反対なので、まず見分ける必要があります。
原因1:話す材料が手元にない
部下自身が、自分の仕事で何が起きているかを言語化できていない状態です。日々こなしてはいるが、どこがうまくいって、どこが引っかかっているかを整理していない。この場合、部下は本当に「特にない」と感じています。隠しているわけではありません。
原因2:材料はあるが、言えない
課題も不満も自覚しているが、この場で言うべきではないと判断している状態です。言えば評価に響くかもしれない。言っても変わらないと分かっている。上司が忙しそうで申し訳ない——理由はさまざまですが、結果は同じで「特にないです」になります。
「特にないです」はどちらの合図なのか
見分け方はいくつかありますが、実務的に有効なのは時間経過で見ることです。初回から数回目までの「特にない」は原因1(材料がない)である可能性が高く、続けるうちに話が出てくるようになります。一方、数か月続けても「特にない」が変わらない場合は原因2を疑うべきです。関係の側に理由があります。
リクルートマネジメントソリューションズが2022年1月に実施した「1on1ミーティング導入の実態調査」(人事系業務を担当する正社員936名が対象)では、導入企業で「上司と部下が本音で話せる関係になっている」と実感されている割合は40.2%でした。同じ調査で「コミュニケーションの機会が増えた」は60.1%です。
この2つの差が示すのは、会話の量が増えても、本音が出る関係になるとは限らないということです。ネタ切れの相談の多くは、実は量の問題ではなく、この差の部分で起きています。
なぜ質問リストでは解決しないのか
「1on1 質問例」で見つかるリストは、原因1にはある程度効きます。材料を引き出す呼び水になるからです。しかし原因2の状態で質問リストを使うと、逆効果になります。
言えない事情がある相手に質問を重ねれば、対話ではなく尋問になります。部下は当たり障りのない答えを用意するようになり、1on1は「無難に乗り切る時間」として学習されます。一度そうなると、質問の質を上げても戻りません。
リストを使う前に確認すべきなのは、ここで話したことが自分の不利益にならないと部下が信じているかです。信じていないなら、まずそこを直します。具体的には、1on1の内容を評価材料にしないと明言し、実際にしないことです。
議題をどう作るのか——3つの引き出し
原因1(材料がない)に対しては、議題を作る仕組みを用意します。上司がその場で質問を絞り出すのではなく、面談が始まる前に材料が揃っている状態を作るほうが確実です。
引き出し1:直近の具体的な出来事から入る
「最近どう?」は範囲が広すぎて答えにくい問いです。期間と対象を狭めると答えやすくなります。「今週やった仕事の中で、いちばん手応えがあったのはどれか」「逆に、やり直したいものはあるか」のように、範囲を区切ります。
引き出し2:本人の自己評価と、外から見た評価の差
本人が「できている」と思っていることと、周囲から見た実態がずれている箇所は、本人にとって気づいていない論点です。差そのものが議題になります。ただしこれを扱うには、外から見た評価が客観的な形で存在している必要があります。
引き出し3:前回の続き
前回合意したことがどうなったかを冒頭で確認します。これは毎回必ず議題になる上に、1on1が積み上がっているという実感を部下側に作ります。逆に前回の話が引き継がれない1on1は、毎回リセットされるため材料が蓄積しません。
上司が話しすぎていないかも確認する
「話すことがない」と感じているのが上司側だけで、実は部下が話す隙がないだけ、というケースもあります。沈黙が続くと上司が埋めてしまい、結果として上司が7割話している——という状態は珍しくありません。
この点については、やってはいけないパターンを別記事で整理しています。ネタ切れを感じたら、1on1のNGなやり方のセルフチェックを先に通してみてください。
多拠点では「材料がない」が構造的に起きる
拠点が分かれていると、原因1が構造的に発生します。上司が部下の仕事を見ていないため、上司の側にも材料がないからです。両者とも材料を持たないまま向き合えば、話が「最近どう?」「大丈夫です」で終わるのは避けられません。
必要なのは質問の工夫ではなく、面談の前に事実を共有しておくことです。1on1コンシェルジュは接客音声をAIが客観採点し、本人の自己評価との差分を可視化します。引き出し2で述べた「自己評価と実態の差」が数字で手元にあるため、議題を探す時間が要りません。何を話すかではなく、その差をどう埋めるかから始められます。
よくある質問(FAQ)
1on1で話すことがないときはどうすればよいですか?
まず原因を2つに切り分けます。部下が自分の仕事で何が起きているかを整理できていない(材料がない)のか、自覚はあるが言えない(関係の問題)のかです。初回から数回目の「特にない」は前者が多く、続けるうちに話が出てきます。数か月続けても変わらない場合は後者を疑い、質問を増やす前に、1on1の内容を評価材料にしないことを明言して実際にそう運用します。
1on1の質問リストを使えば解決しますか?
材料がない状態には呼び水として効きますが、言えない事情がある相手に質問を重ねると尋問になります。部下は当たり障りのない答えを用意するようになり、1on1が無難に乗り切る時間として学習されます。リストを使う前に、ここで話したことが自分の不利益にならないと部下が信じているかを確認してください。
1on1の議題はどうやって作ればよいですか?
面談中に上司が質問を絞り出すのではなく、始まる前に材料が揃っている状態を作ります。引き出しは3つあります。期間と対象を狭めた直近の出来事(今週いちばん手応えがあった仕事は何か)、本人の自己評価と外から見た評価の差、そして前回合意したことの続きです。特に前回の続きは毎回必ず議題になります。
部下が本音を話してくれないのは普通のことですか?
珍しいことではありません。リクルートマネジメントソリューションズが2022年に実施した調査では、導入企業で「上司と部下が本音で話せる関係になっている」と実感されている割合は40.2%で、「コミュニケーションの機会が増えた」の60.1%より低い水準でした。会話の量が増えても、本音が出る関係になるとは限らないことを示しています。
- リクルートマネジメントソリューションズ「1on1ミーティング導入の実態調査」(2022年1月実施、全国主要都市圏の企業にて人事系業務を担当する正社員936名) recruit-ms.co.jp
- パーソル総合研究所「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」(調査時期 2024年6月11日〜13日、直近半年間で1on1を行った正社員20〜59歳 3,000名) rc.persol-group.co.jp