1on1コンシェルジュ

1on1の正しいやり方——データが示す「効果が出る型」5原則

前回のコラムで、1on1の本来の目的は「部下のための時間」であると述べました。しかし、目的を理解しただけでは実際の30分は動きません。幸い、1on1には国内外の調査・実践知が一致して示している「効果が出る型」があります。今回はそれを5つの原則に整理します。

図1|効果が出る1on1、5つの原則

1長く・たまに、ではなく「短く・高頻度」15〜30分×高頻度は、30〜60分×低頻度に勝る。最低でも3週間に1度。
2アジェンダは部下が決めるテーマの所有者を渡す。話す割合の目安は部下8割・上司2割。沈黙を埋めない。
3話すテーマには「効果の順番」がある承認 → 協働 → 目標 → 強み。弱みの話は最後。順番を逆にすると届かない。
4答えではなく「問い」を渡す事実 → 内省 → 一般化 → 次へ。経験学習サイクルを会話の中で1周させる。
5記録し、次回の冒頭でつなぐ3行でよい。「前回の◯◯はどうなりましたか」が単発の面談との差を生む。
5原則は独立していません。原則1(頻度)が崩れると原則5(連続性)が成立せず、原則2(主語)が崩れると原則4(問い)は形だけになります。

原則1:長く・たまに、ではなく「短く・高頻度」

まず頻度です。米ギャラップ社の調査では、15〜30分の会話は、定期的に行われるのであれば30〜60分の会話よりも大きな効果を持つという結果が出ています。逆に、毎週のフィードバックがない上司は、遅れを取り戻すために長い時間を必要とします。

日本で1on1を広めたヤフー(現LINEヤフー)も、2012年から原則「週1回30分」を業務として実施してきました。同社で1on1の普及を主導した本間浩輔氏は、頻度についてこう述べています。

図2|コミュニケーションは、総量よりも頻度

半年に1回の飲み会頻度 年2回
3か月に1回のランチ年4回
毎月1回・1時間年12回
毎週15分年約52回
「半年に1回飲み会をするよりも3カ月に一回ランチを食べる方がいいし、3カ月に1回ランチを食べるよりも毎月1回1時間話した方がいい。毎月1回1時間話すよりも毎週15分づつ話した方がいい。コミュニケーションは頻度が大事です」(本間浩輔氏/ダイヤモンド・オンライン)。下にいくほど1回は短くなりますが、効果は上がります。

理想は週1回30分。難しければ隔週や15分でも構いませんが、最低でも3週間に1度は確保する。それ以上間隔が空くと、1on1は「たまにある面談」に戻ってしまいます。頻度に関する各種データの詳細は なぜ「週1回」なのか——1on1の頻度をめぐる、データの答え にまとめています。

原則2:アジェンダは部下が決める

ヤフーの1on1では、テーマを決めるのは部下側です。上司はコーチングや傾聴のスキルを使い、本人の気づきが深まるように関わる。上司として指示したいこと、修正したいことは、あえて1on1とは切り分けて扱われています。

これは単なる気配りではありません。Googleが自社の数百チームを分析した「プロジェクト・アリストテレス」では、チームの効果性に最も強く関係する要素は心理的安全性でした。リスクを取って発言しても、弱みを見せても大丈夫だと思える環境が、成果の土台になるということです(→ フィードバックが怖い職場は、なぜ伸びないのか)。上司が話題を握り続ける限り、部下の側から本音のテーマが出てくることはありません。

図3|話す割合の目安

部下 80%
上司 20%
これは調査データではなく、実務上の目安です。厳密に計測する必要はありませんが、「今日は自分のほうが話したな」と感じたら、次回は問いを増やす合図と考えてください。沈黙が生まれても、上司が埋めない。数秒の沈黙は、部下が考えている時間です。
上司が沈黙を埋めた瞬間、その30分の主語は上司に戻る。

原則3:話すテーマには「効果の順番」がある

では何を話すのか。ギャラップが約15,000人を対象に行った調査では、上司との直近の会話が「非常に有意義だった」と答えた人はわずか16%でした。時間を取っていても、中身が伴っていないケースが大半だということです。

同社は、有意義だと感じられた会話の特徴を、上位から次の順で挙げています。

図4|会話を「有意義」にする要素(上位から)

1最近の仕事に対する承認・感謝
2協働と人間関係
3現在の目標と優先事項
4会話の長さ(頻度が高ければ短くてよい)
5本人の強み・得意なこと
弱み・できていないこと——最も有意義さを感じにくいテーマ
出典:Gallup「A Great Manager's Most Important Habit」。約15,000人の従業員調査に基づく。

注目すべきは、「弱み・できていないこと」の話が、最も有意義さを感じにくいテーマだったという点です。多くの上司は、これを会話の中心に据えてしまいます。

改善点を扱ってはいけないのではありません。承認・目標・強みという土台があって初めて、弱みの話も届くようになる——順番の問題です。ここは「何を言うか」より「何をほめるか」の設計が効きます(→ 「すごいね」が部下を伸ばさない理由——人を伸ばす“プロセス承認”の科学“効く”フィードバックの条件)。

冒頭の30秒を「先週の〇〇、助かりました」から始めるだけで、その後の30分の質は変わります。

原則4:答えではなく「問い」を渡す

1on1の中核は、経験を学びに変える内省の支援です。『ヤフーの1on1』でも、経験学習サイクル(経験 → 内省 → 概念化 → 次の実践)を回すことの重要性が説かれています。月1回では1周が遅すぎるから週1回で回す、という発想です。

会話の中でこのサイクルを1周させる、使いやすい問いの型がこちらです。

段階ねらいそのまま使える問いやりがちなNG
① 事実を出す経験 「この1〜2週間で、印象に残った出来事は何ですか」 「進捗どう?」(報告を求める問い)
② 内省を促す内省 「うまくいった要因は何だったと思いますか」 「それはこうすべきだったね」(先に答えを言う)
③ 一般化する概念化 「そこから学んだことを、一言でいうと何ですか」 「つまり◯◯ということだね」(上司が言語化してしまう)
④ 次につなぐ次の実践 「次に似た場面が来たら、どうしますか」 「じゃあ次はこうして」(指示で締める)

①で出す「事実」は具体的なほど②以降が深まります。記憶だけに頼ると、できているつもりの部分は素通りされます(→ 自己評価ギャップの正体)。

上司が答えを言えば会話は5分で終わります。しかし部下の中には何も残りません。「どう思う?」を先に置く——これだけで1on1の質は大きく変わります。

原則5:記録し、次回の冒頭でつなぐ

やりっぱなしの1on1は、毎回ゼロからのスタートになります。話したこと、決めたこと、次回までのアクションを一言でも残し、次回の冒頭で「前回の〇〇はどうなりましたか」と拾う。この連続性が「ちゃんと見てくれている」という実感を生み、単発の面談との決定的な差になります。

図5|記録は3行で足りる

話したこと:新規のお客様への説明に時間がかかる、と本人から
決めたこと:説明の順番を、料金→機能から、機能→料金に変える
次回まで:3件試して、手応えを持ってくる
分量ではなく、次回の冒頭で拾えることが目的です。次回は「3件、試せましたか」から始まります。これが積み上がると、成長が本人にも見える形で残ります(→ なぜ“小さな前進の可視化”が最強の動機づけなのか)。

なぜここまでやるのか

型を守ることには、明確な数字の裏付けがあります。

分かっていること数値調査規模
上司が定期的にミーティングを持つ社員のエンゲージメント 持たない社員の約3倍 米国成人 7,712名
直近1週間に有意義なFBを受けた社員のうち、完全にエンゲージした状態の割合 80%(出社日数の最適化の約4倍の効果)
直近の会話が「非常に有意義」だったと答えた社員 16%(=伸びしろ) 約15,000名
強みを軸としたマネジャー育成を受けた管理職のチームの離職率 21〜28%低い 14,774名・2,354チーム

出典:いずれもGallup。最下段は、育成プログラムを受けた管理職群と受けていない対照群を、受講前1年と受講9〜18か月後で比較した検証によるものです。1on1単体の効果ではなく、マネジャー育成全体の効果である点にご注意ください。

同じ検証では、育成を受けた管理職側にも変化が出ています。

図6|マネジャー育成を受けた群の変化(対照群との比較)

チームの離職率−21〜28%
業績改善の可能性+20〜28%
管理職本人の
エンゲージメント
+10〜22%
チームの
エンゲージメント
+8〜18%
出典:Gallup(14,774名・2,354チーム)。バーの長さは各項目の上限値を0〜30%スケールで表したものです。離職率のみ「低いほど良い」項目で、他とは向きが異なります。

1on1は、精神論ではなく再現性のある技術です。頻度を守り、主役を部下に渡し、承認から入り、問いで返し、記録してつなぐ。この5つを回すだけで、同じ30分がまったく違う時間に変わります。

週次で回すためのチェックリスト

  • 頻度:今月、予定どおり実施できたか。キャンセルしたとき、代わりの枠を置いたか。
  • 主語:今日のテーマは、どちらが出したか。話した時間はどちらが長かったか。
  • 順番:最初の30秒で、具体的な事実をひとつ承認できたか。
  • 問い:「どう思う?」より先に、自分の答えを言っていないか。
  • 連続性:冒頭で前回の宿題を拾えたか。3行の記録が残っているか。

最後の壁は準備時間です。前回何を話したか、この2週間で何が変わったかを思い出すところから始めると、30分の面談に30分の準備が要ります。逆に、直近の接客がどう評価され、何が伸びて何が落ちているかが開いた瞬間に揃っていれば、原則3の「承認から入る」も原則4の「事実を出す」も、その場で成立します。

このテーマをもっと深く読む

よくある質問(FAQ)

1on1では何を話せばよいのですか?

ギャラップが約15,000人を対象に行った調査では、会話が有意義だったと感じられた要素は、上から順に(1)最近の仕事に対する承認・感謝、(2)協働と人間関係、(3)現在の目標と優先事項、(4)会話の長さ、(5)本人の強み・得意なことでした。逆に「弱み・できていないこと」は最も有意義さを感じにくいテーマでした。改善点を扱ってはいけないのではなく、承認・目標・強みという土台があって初めて弱みの話も届く、という順番の問題です。

1on1のアジェンダは誰が決めるべきですか?

部下です。ヤフー(現LINEヤフー)の1on1では、テーマを決めるのは部下側で、上司はコーチングや傾聴のスキルを使って本人の気づきが深まるように関わります。上司として指示したいこと、修正したいことは、1on1とは切り分けて扱われています。上司が話題を握り続ける限り、部下の側から本音のテーマが出てくることはありません。実務上の目安は、話す割合を部下8割・上司2割にすることです。

1on1に効果があるという根拠はありますか?

ギャラップの調査では、上司が定期的にミーティングを持つ社員は、そうでない社員に比べて約3倍エンゲージが高いという結果が出ています(米国成人7,712名の調査)。また直近1週間に有意義なフィードバックを受けた社員の80%が完全にエンゲージした状態にあり、この効果は出社日数を最適化することの約4倍でした。さらに強みを軸としたマネジャー育成を受けた管理職のチームでは、離職率が21〜28%低いという結果も報告されています(14,774名・2,354チームの検証)。

1on1の記録はどこまで残すべきですか?

話したこと・決めたこと・次回までのアクションを一言ずつ、3行程度で十分です。重要なのは分量ではなく、次回の冒頭で「前回の◯◯はどうなりましたか」と拾えることです。この連続性が「ちゃんと見てくれている」という実感を生み、単発の面談との決定的な差になります。逆に記録がないと毎回ゼロからのスタートになり、上司側の準備負荷も下がりません。

続編を公開しました。よくある失敗パターンとその回避策は 1on1のNGなやり方——データが示す「やってはいけない7つのパターン」 をご覧ください。

出典

次の1on1で何を聞くか迷ったら、相手と目的を選ぶだけで質問をまとめて作れる無料ツールをご用意しています。登録不要・その場で表示されます。
1on1質問ジェネレーターを使う(無料)
拠点責任者が週15分で使える「辞めるサインの時系列チェックリスト」(A4・4ページ)を無料でお渡しします。メール・LINEのどちらでも受け取れます。
メールで受け取る LINEで受け取る

この記事の発行者

Life concierge(石川県金沢市)

多拠点・遠隔で働くスタッフの接客品質マネジメントを支援し、接客音声をAIが客観採点するサービス「1on1コンシェルジュ」を開発・運営しています。

作成方針:数値・制度・法令は公的統計や調査機関の一次資料に当たり、原文で照合したうえで記載しています。根拠は本文中に調査名・実施時期とあわせて示しています。下書きの作成にAIを利用し、公開前に運営者が内容を確認しています。

事業者情報