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SMART目標設定シートの書き方——国の様式が実際に求めている5項目と記入例

「SMART目標 テンプレート」で検索すると、5つの欄が並んだ穴埋めシートが無料でいくつも見つかります。ところが、埋めたはずの目標が半年後に「できたのか、できていないのか」誰にも判定できない、ということが起こります。原因は様式の出来ではなく、民間のテンプレートには無い欄が2つあることです。国が実際に運用している目標設定の様式を原本で確認すると、SMARTの5要素とは別に、その2つが最初から組み込まれています。

この記事の結論
  • 内閣人事局・人事院の人事評価ガイドが示す目標の記載事項は5項目。「何を/いつまでに/どの水準まで/どのように(方法・手段)/どのような役割や貢献で」で、5つ目はSMARTの穴埋め様式にはまず無い。
  • 様式には困難度の欄があり、その職位の者なら容易に達成できる目標は「」に格下げされる。「達成可能な水準に収める」という一般的なSMART解説とは逆方向。
  • 難易度を上げられるのは、未達成であることのみをもって低い評価としないという但し書きがセットになっているから。この一文が無い様式に困難度の欄だけ足しても機能しない。

「SMART目標設定シート」を探す人が、本当に必要としているもの

テンプレートを探している時点で、書き方そのものは分かっていることがほとんどです。Specific、Measurable、Achievable、Relevant、Time-bound——5つの頭文字は研修で何度も聞いています。それでも様式を探すのは、自分が書いたものが「これでいいのか」判断できないからです。

穴埋め欄を増やしても、この不安は消えません。判断の基準がシートの外にあるからです。そこで、基準を明示している様式——国が実際に職員の評価に使っているものを見にいきます。人事評価ガイド《被評価者の手続編》は、目標の書き方だけでなく、何が良い目標で何がそうでないかの判定基準まで書いてあります。

国が実際に使っている様式の記載事項は5項目

内閣人事局・人事院「人事評価ガイド《被評価者の手続編》」(2022.06 ver.)には、目標の記載事項例が表で示されています。原本から引くと次のとおりです。

要素記載例(原文)
何を▲事業の見直し
いつまでに本年度中/9月まで
どの水準まで○割削減/~の対策を実施
どのように(方法・手段)▲事業のガイドラインの改訂
どのような役割や貢献で関係団体へのヒアリングを担当/過去のヒアリング経験を活かした貢献

SMARTの5文字との対応

前の4項目は、SMARTとほぼ重なります。「何を」と「どの水準まで」がSpecificとMeasurable、「いつまでに」がTime-bound、「どのように」が実行手段です。問題は5つ目の「どのような役割や貢献で」で、これは達成可能かどうかの話ではありません。その目標のどこを自分が引き受けるのかを書く欄です。

SMARTの初出とされる文献では、Aは Achievable(達成可能)ではなく Assignable(誰が実行するのかを割り当てる)だったと複数の資料が伝えています。国の様式に残っているこの5項目目は、その読み方と同じものを求めていることになります。この論点は別記事「SMART目標設定の「A」を取り違えていないか」で詳しく扱っています。

そしてガイドの目標設定チェックリストには、判定の基準がそのまま書かれています。

□ 目標が具体的になっている
・何を、いつまでに、どの水準まで、どのように(方法・手段)が記載され、事後に目標の達成の成否を判断できるようになっているか。
□ 果たす役割や貢献を記載している

「事後に達成の成否を判断できるか」——テンプレートを埋めたあとに自分でかけるべき問いは、これ1つです。

民間のテンプレートに無い欄——困難度と重要度

ガイドには、5項目を書いたあとの記述が続きます。「また、それぞれの目標には、内容に応じて、困難度・重要度の設定が必要です。」——目標そのものとは別に、その難しさと重みを評価者と一緒に確定させます。

容易に達成できる目標は「△」に格下げされる

困難度定義(原文)
被評価者の属する職位にある者全てには期待することが困難と思われる目標
その職位にある者であれば達成することが容易と思われる目標
上記のいずれにも該当しない目標

難しさを見る観点も3つ定義されています。「質」=前例がない新たな業務/「量」=通常の業務量に比して著しく莫大/「速度」=通常の処理に要する時間より著しく短期。難易度を感覚で決めさせず、どの軸で難しいのかを言わせる作りです。

ここが、一般的なSMART解説と正面から食い違う点です。多くの解説は「A=Achievable=達成可能な水準に設定する」と書きます。しかし国の様式では、その職位の者なら容易に達成できる目標は「△」に落とされます。さらに——

職位における通常の目標と比べて困難度が高い目標(チャレンジ目標=困難度が◎の目標)を原則1つ以上設定します

達成可能な水準に収めるどころか、手が届くか分からない目標を必ず1つ持てと求めています。これは、目標の困難度と成果は正の線形関係にあるという目標設定研究の知見(Locke & Latham, 2002/目標困難度の効果量 d = .52〜.82)と同じ方向を向いています。

難易度を上げられるのは、罰しない仕組みがあるから

ただし、困難な目標を課すだけなら現場は壊れます。ガイドはその直後にこう書いています。

特にチャレンジ目標は、未達成であることのみをもって低い評価とせず、達成状況や取組状況の水準が職位にふさわしいものかどうかという観点に留意して評価されます。

この一文とセットで初めて、困難度の欄が機能します。順序が逆になっている職場は少なくありません。高い目標を掲げさせておいて、未達を理由に評価を下げる。そうすると次の期から、全員が「達成できる目標」しか書かなくなります。様式を変える前に、この但し書きを先に決める必要があります。

なお管理職には、これとは別にマネジメント目標——業務運営や組織統率・人材育成に関する課題の目標——を1つ以上設定する定めがあります。部下の指導・育成が例示されています。

記入例——店頭スタッフの目標をこの様式で書く

国の様式は行政の業務を前提にした記載例なので、店頭や現場に置き換えます。携帯販売の店頭スタッフ(入社2年目)の例です。

要素記入例
何を料金プランの提案前に、お客様の現状と不満を要約して確認する
いつまでに3月末まで(2月中旬に一度見直す)
どの水準まで録音した接客10件のうち7件以上で、提案より前に要約の確認が入っている
どのように(方法・手段)週1回15分のロープレ枠を取り、最初の2週間は先輩に同席してもらう
どのような役割や貢献で店舗の課題「提案が刺さらずその場で決まらない」の手前の工程を自分が担当する
困難度◎(現状は10件中2件。質の観点=これまで手順として定着していない)
重要度◎(アンケート指摘の最多項目に直結する)

「どの水準まで」に現状値(10件中2件)を併記しているのが要点です。現状が分からないまま目標値だけ置くと、困難度を判定できません。現状が測れていないなら、最初の目標は「まず2週間測る」で構いません。

いま使っている目標文をそのまま貼り付けると、SMARTの5要素で診断して、登録できる形に書き直します。登録不要・その場で表示されます。
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書いたあと——自己評価と上司評価が食い違ったときに何をするか

目標を書いて終わりにならないよう、評価の手順も決めておきます。厚生労働省の「職業能力評価シート」サンプルには、記入の順序が明示されています。

「評価の基準」に基づき、「①自己評価」→「②上司評価」の順で評価を行ってください。また、上司は「③コメント」を記入してください。特に「自己評価」と「上司評価」が異なる場合は、具体例を示す等しながら、なぜこの評価としたかを明示してください。

評価基準も3段階+除外で定義されています。○=一人でできている(下位者に教えることができるレベルを含む)/△=ほぼ一人でできている(一部、上位者・周囲の助けが必要)/×=できていない(常に上位者・周囲の助けが必要)。該当しない項目は「-」として評価しません。

テンプレート配布サイトがまず書かないのが、食い違ったときに具体例を示して理由を明示するという手順です。ここを省くと、評価面談は「上司の評価を伝える場」になり、本人は納得しないまま次の期に入ります。シートの欄よりも、この運用のほうが効きます。

なお職業能力評価基準は業種別に整備されており、卸売・小売業関係ではスーパーマーケット業・卸売業・DIY業・コンビニエンスストア業・専門店業・百貨店業の6業種が策定されています。店頭の育成であれば、自社の業種の基準を評価項目の下敷きにできます。接客の評価項目づくりについては「接客ロープレのチェックシートは自作しなくていい」で扱っています。

多拠点では、この様式のどこが機能しなくなるか

ここまでの様式は、評価者が被評価者の仕事を日常的に見ていることを暗黙の前提にしています。期首面談で認識を共有し、期中に取組状況を見て、期末に達成状況を判断する。同じ場所で働いていれば成り立ちます。

派遣・委託で複数拠点に人が散っている場合、崩れるのは「どの水準まで」の判定です。10件中7件で要約の確認が入っているかどうかを、月1回の巡回で判断することはできません。結果として、判定できる指標——売上や件数——だけが目標に残り、接客の中身に関する目標が様式から消えます

見直しの間隔をどう設計するかは「目標設定の見直しは、どれくらいの間隔が適切か」で、現在地を本人に見せる方法は「なぜ“小さな前進の可視化”が最強の動機づけなのか」で扱っています。

よくある質問(FAQ)

SMART目標設定シートのテンプレートは、どこで手に入りますか?

公的なものであれば、内閣人事局・人事院「人事評価ガイド《被評価者の手続編》」に目標の記載事項例と目標設定チェックリストが、厚生労働省「職業能力評価シート」に評価の記入手順と基準が掲載されており、いずれもPDFで公開されています。SMARTという名称は使われていませんが、記載事項は重なります。当サイトでも、この記事の5項目をそのまま記入欄にしたA4・4ページのシートを無料で配布しています。

目標は達成できる水準に設定したほうがよいのではないですか?

国の様式では逆の扱いです。その職位にある者であれば達成することが容易と思われる目標は困難度「△」とされ、職位における通常の目標より困難度が高い「チャレンジ目標」(困難度◎)を原則1つ以上設定するよう求められています。目標の困難度と成果は正の線形関係にあるという研究知見(Locke & Latham, 2002/効果量 d = .52〜.82)とも同じ方向です。ただしこれは、未達成であることのみをもって低い評価としない、という運用とセットで成立します。

目標管理シートの記入例は、どこを見ればよいですか?

人事評価ガイドの「目標の記載事項例」に、要素ごとの記載例が表で示されています(何を=▲事業の見直し、いつまでに=本年度中/9月まで、どの水準まで=○割削減 など)。行政の業務が前提なので、自社の業務に置き換える作業は必要です。本記事では店頭スタッフの例に置き換えたものを掲載しています。置き換えるときは、「どの水準まで」に現状値を併記すると困難度の判定ができるようになります。

自己評価と上司評価が食い違ったときは、どうすればよいですか?

厚生労働省の職業能力評価シートでは、「自己評価」と「上司評価」が異なる場合は、具体例を示す等しながら、なぜその評価としたかを明示することとされています。評価そのものを一致させるのではなく、食い違いの理由を具体例で説明するのが手順です。この一手間を省くと、評価は伝達で終わり、本人の行動は変わりません。

この記事で使った資料の範囲と限界

人事評価ガイドと職業能力評価シートは、いずれも公開されている原本PDFを取得し、本文を直接確認したうえで引用しています。引用部分は原文の表現をそのまま用いました。卸売・小売業関係6業種の名称は、厚生労働省「職業能力評価基準の策定業種一覧」のページで確認したもので、評価シートのサンプルPDF自体には記載がありません(サンプルの内容は「卸売業・メーカー・サービス レベル1」の1種類です)。

注意点として、人事評価ガイドは国家公務員の人事評価を対象とした資料であり、民間企業にそのまま適用できるものではありません。目標設定は4月と10月の年2回、期首面談で確定するという運用も、この制度に固有のものです。本記事では、様式の考え方——記載事項の項目立てと、困難度を未達成で罰しないという設計——を参照しています。

また Locke & Latham (2002) の効果量は成果(performance)を測ったもので、エンゲージメントや定着を測ったものではありません。この数値をもって「難しい目標を置けば人が辞めなくなる」とは言えません。

出典

この記事の発行者

Life concierge(石川県金沢市)

多拠点・遠隔で働くスタッフの接客品質マネジメントを支援し、接客音声をAIが客観採点するサービス「1on1コンシェルジュ」を開発・運営しています。

作成方針:数値・制度・法令は公的統計や調査機関の一次資料に当たり、原文で照合したうえで記載しています。本記事では内閣人事局・人事院の人事評価ガイドと、厚生労働省の職業能力評価シートについて、公開されている原本PDFを取得して本文を直接確認しました。策定業種の一覧も厚生労働省のページで実物を確認しています。確認できていない数値は記載していません。下書きの作成にAIを利用し、公開前に運営者が内容を確認しています。

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