評価面談に納得できないのはなぜか——「有益8割」と「育成に活きている1割弱」の落差
評価面談のあと、部下の表情が晴れない。あるいは自分が受ける側で、結果に納得できないまま席を立った——。よくある光景ですが、原因を「上司の伝え方が下手だから」で片づけると打ち手を誤ります。回答者11,203人の公的調査を読むと、納得感がどこで決まるかは、かなりはっきり特定されています。
- 面談そのものを有益とする人は8割強。それでも結果が育成に活きている実感は1割弱。落差はここにある。
- 納得感を上げる条件は特定されている。時間をかける・評価の理由を説明する・具体的な事実を挙げるの3つ。
- 3つ目の「具体的な事実」が最も難しい。手元に事実がなければ、時間をかけても説明はできない。
評価面談は嫌われているのか
意外に思われるかもしれませんが、面談そのものは否定されていません。内閣官房内閣人事局が設置した「人事評価の改善に向けた有識者検討会」の報告書(令和3年3月)は、職員意識調査の結果として「期首面談・期末面談を有益とする者が8割強」と記しています。
※以下で引用する数値は、いずれも国家公務員を対象とした調査によるものです。民間企業にそのまま当てはまるとは限りません。また調査は令和2年(2020年)に実施されたもので、現在の状況とは異なる可能性があります。それでも参照する価値があるのは、回答者11,203人・推定回収率81.6%という規模で、評価面談の実態が数字で公開されている調査が他にほとんどないためです。
つまり「評価面談 いらない」「評価面談 やりたくない」と検索されている状態は、制度そのものへの拒否ではなく、期待したものが返ってこないことへの反応と読むほうが実態に近いと考えられます。
それでも納得できないのはなぜか
同じ報告書は、続けてこう書いています。「人事評価の結果が人材育成に活用されている実感があると回答した者は1割弱と非常に低い水準となっている」。
8割強が「有益」と答える場が、1割弱にしか育成として届いていない。 この落差が、納得できなさの正体です。面談は行われ、話もした。しかしその結果が自分の成長に結びついた実感がない——だから「何のためにやったのか」が残ります。
ここで重要なのは、「面談をやったかどうか」を指標にしても、この落差は縮まらないということです。実施率は既に高く、問題は実施の有無ではなく中身にあります。
面談にどれくらい時間がかけられているのか
報告書は面談の実態についても数字を挙げています。「面談に要した時間は約5割が10分未満、本府省庁では職員の約1割はそもそも面談を受けていない」。
半年から1年の働きぶりを評価し、その理由を伝え、次の目標を握る場が、半数は10分未満で終わっている。この時間で扱えるのは結論の通知までで、理由の説明や対話は物理的に入りません。「評価されていない」と感じる背景には、こうした時間の実態があります。
納得感を上げる条件は特定されている
この報告書の価値は、課題を挙げるだけでなく何をすると納得感が上がるかまで書いている点にあります。
「期首・期末面談に時間をかけ、評語付与の理由をしっかりと説明し、具体的な事実を挙げて指導を行うことにより、人事評価制度に対する納得感がより高まる傾向が見て取れる」——報告書の記述です。
条件は3つに分解できます。
| 条件 | やらないと何が起きるか | 難易度 |
|---|---|---|
| 面談に時間をかける | 結論の通知で終わり、対話が発生しない | 低(枠を取るだけ) |
| 評価の理由を説明する | 「なぜこの評価なのか」が分からず、印象論に見える | 中(言語化が要る) |
| 具体的な事実を挙げる | 説明が抽象論になり、反論も納得もできない | 高(事実が手元にないと不可能) |
最初の2つは、意志と時間で実行できます。3つ目だけが性質の異なる問題です。挙げるべき具体的な事実が手元になければ、時間をいくら取っても、説明は「もう少し積極性がほしい」といった抽象論に着地します。
「評価されていない」と感じるとき、何が起きているのか
部下が「評価されていない」と言うとき、多くは評価の高さへの不満ではなく、見られていないことへの不満です。自分がやったことのうち、上司が把握しているのはごく一部だと感じている状態です。
この感覚は、具体的な事実が挙がるかどうかで一瞬で変わります。「先月のあの場面で、こういう対応をしていた」と言われれば、評価が高くなくても見られていたという事実は伝わります。逆に一般論だけで通知されると、評価が高くても「適当に付けられた」と受け取られます。
ここは自己評価とのずれとも直結します。本人が「できている」と思っている点と、評価者が見ている点が食い違ったまま面談に入ると、議論は平行線になります。この構造は自己評価ギャップの記事で詳しく扱っています。
民間企業は何をしているか
同じ報告書は、参考として民間企業へのヒアリング調査も行っています。そこでは「面談の場において従業員それぞれの強みや改善点などの具体的なフィードバックを行う」取組が挙げられており、また「テレワークが急速に増加する中、オンラインコミュニケーションツールの積極活用、1on1ミーティングの実施等によるコミュニケーションの機会の確保等、様々な工夫が行われていた」と記されています。
注目したいのは、評価面談そのものを改良するのではなく、その外側で接点を増やしている点です。年に1〜2回の面談だけで具体的な事実を集めるのは無理があるため、日常の対話で材料を蓄積しておく。1on1が併用されるのはこの理由によります。1on1と評価面談の役割の違いは別記事で整理しています。
離れた拠点では、この3条件が崩れやすい
多拠点・遠隔のマネジメントでは、3つ目の条件が構造的に満たせません。上司が部下の働きぶりを見ていないため、挙げられる具体的な事実がそもそも存在しないからです。
結果として面談は「数字の確認」と「一般的な励まし」で構成され、部下からは「見られていないのに評価された」ように映ります。これは上司の怠慢ではなく、情報が届いていない構造の問題です。
1on1コンシェルジュは、接客音声をAIが客観採点し、どの場面で何ができていたかを根拠付きで記録します。面談で挙げるべき具体的な事実が手元に残るため、報告書が挙げた3つ目の条件を離れた場所からでも満たせます。
よくある質問(FAQ)
評価面談に納得できないのはなぜですか?
面談そのものが否定されているわけではありません。内閣人事局の有識者検討会報告書(令和3年3月)によれば、期首面談・期末面談を有益とする者は8割強でした。一方で、人事評価の結果が人材育成に活用されている実感があると回答した者は1割弱にとどまります。この落差が納得できなさの正体です。ただしこの調査は国家公務員を対象としたもので、民間企業にそのまま当てはまるとは限りません。
評価面談の納得感を上げるには何をすればよいですか?
同報告書は「期首・期末面談に時間をかけ、評語付与の理由をしっかりと説明し、具体的な事実を挙げて指導を行うことにより、人事評価制度に対する納得感がより高まる傾向が見て取れる」と記しています。条件は、時間をかける・評価の理由を説明する・具体的な事実を挙げる、の3つです。
評価面談はどれくらいの時間をかけるべきですか?
報告書によれば、面談に要した時間は約5割が10分未満で、本府省庁では職員の約1割はそもそも面談を受けていませんでした。10分未満では評価結果の通知はできても、理由の説明や対話は物理的に入りません。時間をかけることが納得感を高める条件の1つに挙げられていることを踏まえると、結論の通知だけで終わらない長さが必要です。
部下が「評価されていない」と言うのはどういう意味ですか?
多くは評価の高さへの不満ではなく、見られていないことへの不満です。具体的な事実を挙げて説明されれば、評価が高くなくても見られていたという事実は伝わります。逆に一般論だけで通知されると、評価が高くても適当に付けられたと受け取られます。
- 人事評価の改善に向けた有識者検討会「報告書」(令和3年3月、内閣官房内閣人事局)。同報告書が基にした職員意識調査は、国家公務員法に規定する人事評価が実施される一般職の国家公務員から各府省等一律5%を抽出したインターネット調査(実施期間 令和2年9月28日〜10月16日、回答者数11,203人、推定回収率81.6%)。 cas.go.jp(PDF)