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派遣先の評価は、3社に1社しか渡っていない——働きぶりを自前で測る

契約更新の時期になると、担当者が派遣先を回って「いかがですか」と聞く。返ってきた言葉を持ち帰り、それを材料に単価を交渉する。この進め方が当たり前になっているとしたら、それは担当者の努力不足ではなく、評価情報が渡ってくる仕組みが存在しないためです。公的統計で、その構造を確認します。

市場は伸びている。だから競争も伸びている

厚生労働省の「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」によれば、派遣労働者数は約220万人(前年度比3.9%増)、派遣先件数は約86万件(同7.9%増)、年間売上高は9兆9,005億円(同9.4%増)でした。派遣料金は8時間換算の平均で26,257円(同3.6%増)と上がっています。

市場が拡大している以上、参入も競合も増えます。そこで問われるのが「なぜ御社なのか」の答えです。

派遣先が求めているのは、まず「早さ」

厚生労働省「令和4年 派遣労働者実態調査」で、派遣先が派遣労働者を就業させる主な理由(複数回答3つまで)はこうなっています。

派遣労働者を就業させる理由事業所割合
欠員補充等必要な人員を迅速に確保できるため76.5%
一時的・季節的な業務量の変動に対処するため37.2%
軽作業、補助的業務等を行うため30.9%
専門性を活かした人材を活用するため19.9%
自社で養成できない労働力を確保するため12.2%

出典:厚生労働省「令和4年 派遣労働者実態調査の概況」表3。卸売業,小売業では「欠員補充等」77.4%。

突出しているのは「早く埋まること」です。品質は選定理由の上位に出てきません。だからこそ、比較軸は自然と価格とスピードに寄っていきます。

では品質は問われていないのかというと、そうではありません。同じ調査で派遣を受け入れない理由を見ると、「必要な職業能力を備えた派遣労働者をすぐに確保することが困難であるため」が17.7%挙がっています。品質は選定理由ではなく、不安要素として存在している——これが現在地です。

品質は、評価されていないのではない。評価する材料が、どこにも無いだけだ。

評価情報は、3社に1社しか渡っていない

同調査には、派遣元が求めた情報を派遣先が実際に提供したかどうかの集計があります。

派遣元から求められ、実際に提供したことがある情報事業所割合
福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)46.1%
派遣先が行った派遣労働者の職務の評価情報(働きぶりや勤務態度)32.2%
業務に必要な能力を付与するための教育訓練27.6%
技能や能力の向上に関する評価結果25.9%
成果に関する評価結果25.0%
同種業務従事者の賃金水準16.4%

出典:同上 表9。派遣労働者が就業している事業所のうち、派遣元事業所から情報提供を求められ、実際に提供したことがある事業所の割合。

働きぶりの評価が渡ったのは32.2%。求めたうえで、3社に1社です。成果の評価にいたっては4社に1社。つまり、派遣スタッフがどう働いているかという情報は、その大半が派遣先の中に留まったままになっています。

そして、渡ってきた場合でも形式は決まっていません。厚生労働省の委託調査(令和6年度)には、派遣元へのヒアリング記録としてこう残っています。

「派遣先の評価を材料に料金交渉を行う。派遣先の上長に評価をヒアリングし、材料としている。評価用のフォーマットはない。」(D社)

※このヒアリングは5社程度を対象とした定性的な記録であり、統計値ではありません。業界全体の実態を示すものとしてではなく、現場で起きている一例として引用しています。

材料は担当者の観察と記憶。担当者が代われば引き継げず、他社も同じことをしているので差別化にもならない。「うちのスタッフは品質が高い」をどう“証明”するかで書いた「主観は引き継げない」という問題は、統計で見てもこの通りに現れます。

スタッフ側も「見てもらえていない」と感じている

評価の材料がないことは、単価交渉だけの問題では終わりません。日本人材派遣協会の「派遣社員WEBアンケート調査結果 2025年度」では、営業担当者とのコミュニケーションについて次の差が出ています。

コミュニケーションの内容現在希望
就業条件の相談・交渉52.1%66.3%
派遣先でのトラブル相談35.3%40.1%
世間話・雑談32.6%18.2%
キャリアアップの支援5.9%22.1%
スキルアップの支援4.9%19.4%

出典:一般社団法人日本人材派遣協会「派遣社員WEBアンケート調査結果 2025年度」。WEB自記式・非確率標本による調査で、有効回答9,767件のうち現在派遣で就業中の5,523人を集計。

雑談は求められている量の倍やられていて、スキルアップの話は求められている量の4分の1しかされていない。同調査では、派遣会社の推奨度(NPS)はマイナス29.3、キャリア形成に対する支援の満足度は22.6%にとどまっています。面談の頻度は「2〜3か月に1回」が51.5%です。

担当者が雑談で場を持たせているのは、話す気がないからではありません。スキルの話をするための材料がないからです。2〜3か月に1回、手ぶらで会えば、話題は天気とシフトの話になります。

評価を「もらう」から「自分で持つ」へ

派遣先から評価が渡ってくるのを待つ限り、この構造は変わりません。3社に1社しか出てこず、出てきても形式が定まっていないものを、交渉と育成の土台にはできないからです。

解決の方向は一つです。自社で、スタッフの働きぶりを客観的に測って持っておくこと。成立条件は3つだけです。

この3つが揃うと、同じ材料が3つの用途に使えます。更新交渉では単価の根拠になり、スタッフとの面談では雑談ではなくスキルの話ができ、辞めそうな兆候にも早く気づけます。派遣・委託の現場が置かれた市場環境そのものは、入る人より、辞める人が多い——数字で読む販売業界の離職超過で整理しています。

ちなみに、制度で差別化している会社は0.3%しかない

厚生労働省の委託事業である「優良派遣事業者認定制度」の認定事業者は、2025年9月30日現在で累計133社です。一方、令和6年度に事業報告書を提出した派遣元事業所は43,812所あります。認定という形で品質を示している会社は、全体から見ればごく一部にとどまります。

裏を返せば、日々のスタッフの働きぶりを数字で示せる会社は、それだけで目立てるということでもあります。認定の取得には時間がかかりますが、配属中のスタッフの接客を測ることは今日から始められます。

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よくある質問(FAQ)

派遣先からスタッフの評価はどのくらい派遣元に渡っているのですか?

厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査」では、派遣労働者が就業している事業所のうち、派遣元から情報提供を求められて「派遣先が行った派遣労働者の職務の評価情報(働きぶりや勤務態度)」を実際に提供したことがある事業所は32.2%でした。技能や能力向上に関する評価結果は25.9%、成果に関する評価結果は25.0%です。求めても、渡してもらえたのは3社に1社という水準です。

派遣先はなぜ派遣を使うのですか。品質は選定基準になっていないのですか?

同調査で派遣労働者を就業させる主な理由は「欠員補充等必要な人員を迅速に確保できるため」が76.5%と突出しています。まず求められているのは充足のスピードです。一方で派遣を受け入れない理由には「必要な職業能力を備えた派遣労働者をすぐに確保することが困難であるため」が17.7%挙がっており、品質への不安自体は存在します。スピードで選ばれ、品質は不安要素として残っている状態です。

更新交渉のとき、単価の根拠はどこから持ってくればよいのですか?

厚生労働省の委託調査では、派遣元の担当者が派遣先を訪問して就業状況を自ら評価し、料金交渉の材料にしている事例が報告されています。同時に「評価用のフォーマットはない」という証言も記録されており、材料は担当者の観察と記憶に依存しているのが実情です。自社で継続的にスタッフの接客を客観評価しておけば、派遣先からの提供を待たずに交渉材料を持てます。

スタッフとの面談は、何を話すべきなのでしょうか?

日本人材派遣協会の2025年度アンケートでは、営業担当者とのコミュニケーション内容について、現状は「世間話・雑談」が32.6%なのに希望は18.2%、逆に「スキルアップの支援」は現状4.9%に対し希望19.4%でした。求められているのは雑談ではなく、スキルとキャリアの具体的な話です。ただし話す材料がなければ雑談にならざるを得ないため、まず材料をつくることが先になります。

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