1on1にかかる費用はいくらか——本当のコストは、お金ではなく時間である
「1on1を導入したいが、費用はいくらかかるのか」——稟議を通す場面で必ず出る問いです。結論から言えば、1on1そのものに直接の費用は発生しません。しかしそれは「タダでできる」という意味ではありません。実際に消費されるのは上司の時間であり、多くの導入がつまずくのはこの点です。この記事では、厚生労働省の調査が示す企業の教育訓練費の実態と、1on1に必要な工数を並べて、どこで費用の判断が生じるのかを整理します。
- 1on1に直接費用はかからない。かかるのは上司の時間で、これは人件費として実在するコスト。
- 企業がOFF-JTに支出している額は労働者一人当たり年1.5万円(厚生労働省・令和6年度調査)。1on1の工数はこれを容易に超える。
- 費用の判断が生じるのは、工数を減らすためか、効果を測るためのどちらか。
1on1そのものに費用はかかるのか
直接の費用は発生しません。 1on1は上司と部下が話すだけの取り組みで、購入が必要なものはありません。会議室すら不要で、オンラインでも実施できます。この点で、研修やシステム導入とは性質が異なります。
ただし、費用がゼロであることと、コストがゼロであることは別です。1on1が消費するのは上司の時間であり、これは人件費として実在します。稟議上は無料に見えるため軽視されがちですが、導入が形骸化する原因のほとんどはここにあります。
1on1の工数はどれくらいになるのか
計算は単純です。部下の人数 × 実施頻度 × 1回の時間に、準備と記録の時間を加えます。
| 条件 | 面談の時間 | 準備・記録を含めた月間工数 |
|---|---|---|
| 部下5名・週1回・30分 | 月10.0時間 | 約15時間(面談の1.5倍で試算) |
| 部下5名・隔週・30分 | 月5.0時間 | 約7.5時間 |
| 部下10名・週1回・30分 | 月20.0時間 | 約30時間 |
| 部下10名・月1回・60分 | 月10.0時間 | 約15時間 |
※準備・記録の時間は面談時間の0.5倍として試算した参考値です。実測値ではなく、公的な統計にもとづく数字でもありません。実際は面談の質や記録の運用によって変わります。
部下10名を週1回で回すと、月30時間前後——月の稼働の2割近くが1on1に充てられる計算になります。これを「時間があれば」で運用すれば、忙しい月から消えていくのは避けられません。工数を認めて業務として組み込むか、頻度を落とすかの判断が要ります。
企業は人材育成にいくら払っているのか
比較の基準として、公的統計を見ておきます。厚生労働省が令和7年6月27日に公表した令和6年度「能力開発基本調査」によれば、OFF-JTに支出した費用の労働者一人当たり平均額は1.5万円でした。自己啓発支援に支出した費用は労働者一人当たり0.4万円で、前回の0.3万円から上昇しています。
この数字には読み方の注意が2つあります。第一に、これは「令和5年度に費用を支出した企業」の平均額であり、支出しなかった企業を含めた全体の平均ではありません。第二に、OFF-JTは職場を離れて行う教育訓練を指す区分であり、1on1はこの区分に含まれません。したがって1.5万円は1on1のコストではなく、あくまで比較のための参照値です。
そのうえで並べると、構図が見えます。1人あたり年1.5万円の研修費は支出できても、上司の月30時間は捻出できない——多くの組織で起きているのはこの状態です。金額として計上されないコストは、意思決定の俎上に載りません。
どこで費用の判断が生じるのか
1on1に金銭的なコストが発生するのは、次の2つの場面に限られます。
1. 工数を減らすため
記録や日程調整、振り返りの管理に時間がかかっている場合、ツールで削れる部分があります。判断基準は単純で、削減できる時間の人件費が、ツールの費用を上回るかです。上司1人の1時間あたり人件費が仮に4,000円なら、月5時間削れれば2万円分になります。
2. 効果を測るため
1on1をやっているが成果につながっているか分からない、という状態を解消するための投資です。こちらは工数削減と違い、金額に直しにくいのが難点です。判断するなら、測れないまま続けた場合に何を失うか(形骸化した面談の工数、気づけないまま進む離職)で見積もることになります。
1on1ツールの料金はなぜ「要問い合わせ」が多いのか
この領域は、規模や課題に応じた個別見積もりにしている製品が少なくありません。比較する際は、初期費用の有無、課金単位(拠点・人数・利用量)、最小構成で始められるか、無料で試せるかの4点を確認すると、見積もりを取る前に候補を絞れます。
なお1on1コンシェルジュは月額料金を公開しており、スモールプランは1名から月額¥5,500(税別・初期費用¥9,800)で始められます。プランごとの内訳は料金ページに掲載しています。
ツールのタイプによって評価できる対象が異なる点については、AI採点ツールの選び方で整理しています。
多拠点では、工数のかかり方が変わる
拠点が分かれている場合、面談そのものの時間は同じでも、その前段にかかる時間が増えます。部下が今どんな仕事をしていて、何に詰まっているかを、上司が把握していないためです。状況の確認から始めると、30分の面談のうち半分が現状把握で終わります。
1on1コンシェルジュは接客音声をAIが客観採点し、本人の自己評価との差分を可視化します。何が起きているかを面談の前に共有できるため、限られた30分を確認ではなく対話に使えます。工数を削るという意味でも、効果を測るという意味でも、判断材料はここに集約されます。
よくある質問(FAQ)
1on1の導入に費用はかかりますか?
1on1そのものに直接の費用は発生しません。上司と部下が話すだけの取り組みで、購入が必要なものはなく、オンラインでも実施できます。ただし上司の時間は人件費として実在するコストです。稟議上は無料に見えるため軽視されがちですが、導入が形骸化する原因のほとんどはこの工数にあります。
1on1にはどれくらいの工数がかかりますか?
部下の人数×実施頻度×1回の時間に、準備と記録の時間を加えて計算します。部下10名を週1回30分で回す場合、面談だけで月20時間、準備・記録を面談時間の0.5倍として試算すると月30時間前後になります。これは月の稼働の2割近くにあたるため、業務として組み込むか頻度を落とすかの判断が必要です。
企業は人材育成にいくら支出していますか?
厚生労働省が令和7年6月27日に公表した令和6年度「能力開発基本調査」によれば、OFF-JTに支出した費用の労働者一人当たり平均額は1.5万円、自己啓発支援に支出した費用は0.4万円でした。ただしこれは費用を支出した企業に限った平均額であり、支出しなかった企業を含む全体平均ではありません。またOFF-JTは職場を離れて行う教育訓練の区分で、1on1は含まれません。
1on1ツールを導入する判断はどこですべきですか?
金銭的なコストが正当化されるのは、工数を減らす場合と効果を測る場合の2つです。工数削減なら、削減できる時間の人件費がツールの費用を上回るかで判断できます。効果測定は金額に直しにくいため、測れないまま続けた場合に失うもの(形骸化した面談の工数、気づけないまま進む離職)で見積もることになります。
- 厚生労働省「令和6年度『能力開発基本調査』の結果を公表します」(令和7年6月27日公表。事業所調査は7,218事業所を対象、有効回答率54.1%) mhlw.go.jp
- リクルートマネジメントソリューションズ「1on1ミーティング導入の実態調査」(2022年1月実施、全国主要都市圏の企業にて人事系業務を担当する正社員936名) recruit-ms.co.jp