成長したいのに、辞めていく——“成長ジレンマ型”離職を、辞める前に1on1で拾う
辞めていく人材の中には、不満ではなく「もっと成長したい」という前向きな理由で去っていく人がいます。しかもその本音は、ほとんど会社に届いていません。現場マネジメントは、伸びるはずだった人材を静かに取りこぼしている——このコラムは、その構造と、辞める前に真因を拾う方法を扱います。
「成長したいのに、辞める」という静かな損失
小売・卸売の年間離職者は142.7万人(離職率15.1%、令和6年で全産業最多)。このうち、各種調査が示す「成長・キャリア」起因の割合(10〜15%)を当てはめると、成長を求めて辞める“成長ジレンマ型”は年間およそ14〜21万人。若手中心で見れば3割規模まで広がります。
裏付けは複数あります。若手の約3割が「成長できる環境がない」ことを理由に離職し、20〜30代の94%が就職先選びで成長環境を重視しています。本音の退職理由でも「自己成長が感じられない」が54.5%と上位。20代では「成長の実感がなかった」が17%と、30代以上(2%)の8.5倍に達します。意欲の高い人材ほど、成長が見えない現場から静かに離れていくのです。
辞める理由の“本音”は、会社に届いていない
問題は、それが起きているのに拾えていないことです。退職者の88%は本音を会社に伝えていません。建前は「家庭の事情」「別業界へのチャレンジ」。そして本音を言わない最多の理由が——
「上司に話しても理解してもらえないと思ったから」。真因は、現場の対話から漏れ落ちている。
つまり“成長ジレンマ型”の離職は、データに現れにくく、退職面談でも建前に置き換えられる。会社が把握できた本音はわずか12%で、残りの88%は隠れたまま流出していきます。原因分析をどれだけ精緻にしても、そもそも真因が入力されていないのです。
本音が出るかは、上司の対話力で決まる
本音が漏れ落ちる“ゲート”は、上司との対話です。上司とのコミュニケーション不足は離職の直接原因であると同時に、真因が隠れる入口でもあります。実際、辞めたい理由の同率1位は「職場の人間関係」(38.6%)で、中でも最も多いのが上司・先輩との関係。本音の退職理由でも「上司と合わない」が48%(同率2位)に上ります。
決定的なのは、同じ部下でも上司次第で結末が変わるという事実です。
理解のある上司には本音が出て真因を拾えるが、「言っても無駄」と感じさせた瞬間、真因は隠れたまま人材が流出する。上司の対話力そのものが、離職を左右する変数なのです。
なぜ現場は“成長ジレンマ型”を取りこぼすのか
- 成長を測る物差しがない:「成長を実感できない」と言われても、成長を客観的に示せないため、対話が主観のぶつかり合いになる。
- 多拠点で対話が見えない:離れた拠点の1on1がそもそも行われているか、機能しているかが把握できない。
- 上司の対話力が“ブラックボックス”:どの上司の下で本音が出て、どの上司の下で漏れているかが分からない。
結果として、真因は面談の場に載らないまま、建前だけが記録に残ります。
離職前に真因を拾う3つの条件
- 構造化された1on1:思いつきの雑談ではなく、成長・目標・つまずきを必ず扱う“型”を持つ。本音が出る器をつくる。
- 成長を追える客観スコア:接客の質をAIで客観採点し、成長を“線”で可視化する。「成長を実感できない」を、事実ベースの対話に変える。
- 上司の対話力の可視化:傾聴・承認・フィードバックの質をスコアで見える化し、底上げする。本音が出る1on1を、属人技ではなく仕組みにする。
接客音声をAIで客観採点すれば、成長の停滞・スコアの伸び悩み・自己評価との乖離を離職前に検知し、「要注意」のスタッフを早期に可視化できます。その事実を、上司と部下の対話の場にそのまま載せられる。年間約60万人規模とされる「対話で防げた離職」に、辞めると決まる前に手を打てます。
まず何から始めるか
全社導入は要りません。まず1拠点で、スタッフの接客スコアと1on1の質が“見える状態”をつくる。成長が停滞し始めた瞬間に気づき、上司がその事実を持って対話に臨める——それが、成長ジレンマ型離職に対する最も現実的な一手です。
よくある質問(FAQ)
「成長ジレンマ型」の離職とは何ですか?
能力や待遇への不満ではなく、「もっと成長したい・目標を持ちたいのに、この現場では成長を実感できない」という前向きな理由で辞めていく離職のことです。小売・卸売の年間離職者142.7万人のうち、各種調査が示す成長・キャリア起因の割合(10〜15%)を当てはめると年間約14〜21万人、若手中心では3割規模まで拡大すると推計されます。優秀で意欲の高い人材ほど起きやすいのが特徴です。
なぜ退職者は本当の理由を会社に伝えないのですか?
調査では退職者の88%が本音の退職理由を会社に伝えていません。建前は「家庭の事情」「別業界への挑戦」に置き換えられがちです。本音を言わない最多の理由は「上司に話しても理解してもらえないと思ったから」であり、真因は現場の対話から漏れ落ちています。
上司の対話力は離職にどう影響しますか?
本音を伝えられるかは上司の対話力で決まります。上司が「話を理解してくれる」と感じる部下は56%が本音を話せて真因を拾える一方、「理解してもらえない」と感じた部下は54%が本音を伏せて離職し、20代では65%に達します。同じ部下でも、上司次第で結末が変わります。
成長ジレンマ型の離職を、辞める前に拾うには何が必要ですか?
本音が出る場としての構造化された1on1、成長を追える客観スコア、そして上司の対話力そのものの可視化の3つです。接客音声をAIで客観採点すれば、成長の停滞やスコアの停滞・自己評価との乖離を離職前に検知でき、上司と部下の対話の場に事実として載せられます。上司の傾聴・承認の質もスコアで底上げできます。
出典
- 厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概況」(離職者数・離職率)/同 令和2年(職場の人間関係 13.3%)
- エン・ジャパン「仕事を通じた成長実感」意識調査(若手約3割・20〜30代の94%が成長環境を重視)/エン・ジャパン 転職コンサルタント調査(本音「上司と合わない」48%)
- パーソルビジネスプロセスデザイン「退職理由の本音に関する実態調査 2025」(自己成長が感じられない 54.5%/やりがいを感じない 55.1%)
- 株式会社ハッカズーク「2025年 退職理由の本音と建前に関する実態調査」(n=574。20代の本音「成長の実感がなかった」17%/本音を伝えない割合と最多理由)
- doda「転職理由ランキング」(30代「スキルアップしたい」22.8%/40代「社員を育てる環境がない」23.3%)
- 日本労働調査組合 退職動機アンケート(職場の人間関係 38.6%)/Job総研「退職に関する実態調査」2022(上司への不満 30.5%)
- 注記:「成長・目標型離職」および「対話で拾える可能性のある離職」の人数は公的統計に単独区分がないため、上記各調査が示す割合を小売・卸売の年間離職者数142.7万人に適用した本資料独自の推計です。